第28章 はじまりの一歩
陣平くんに改札の前でキスをされた。
キスぐらいさせろ
なんて、彼らしく強引で粗暴で、だけどそれが心地良くて仕方ない。
電車に乗りながら、さっきのキスを思い出してはニヤニヤと顔が緩むわたしを、同じ車両に乗っている乗客たちが不審そうにチラチラ見た。
幸せなんだからいいでしょ!!?
と、つい対抗してしまいそうになる自分が怖い…
来月には同棲することが確定したんだから、1ヶ月はそのために焦らし期間よ!
と、来月が待ちきれない高揚した気分のまま、わたしは大学の図書館に向かった。
東都大学は日本で一番頭が良いと言われている大学。
それだけあって、図書館にはありとあらゆる本が並んでる。
本棚を通り過ぎて机を確保しようとしたとき、不意に本棚に置いてあった一つの本が目に入った。
その背表紙に書かれたタイトルを見て、わたしは思わずそれを手に取った。
「タイムトラベルについての考察…」
こんな非現実的なタイトルの本、以前とわたしは見向きもしなかった。
それが、タイムスリップを経験すると言う夢みたいな現実を知った今のわたしは、中に何が書かれているのか興味がそそられた。
勉強するから図書館に来たのに、わたしは空いてる席に座るとその本を開こうと手を添える。
けれど、ぴた…と動きを止めた。
もしもこの本に、タイムスリップして人生をやり直したとしても、結果は変わらない。
なんて書かれていたらどうしよう。
けれど、何か陣平くんを救うヒントが書かれているかもしれない。
複雑な胸中で迷いながらもその本の表紙をゆっくり開いた。