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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第28章 はじまりの一歩




はぁー…とため息を吐いて電話を切ると、隣にいたミコトが俺の顔を覗き込んできた。


「仕事?」

「あぁ。やっぱり招集だった。
悪いけど、いかねぇと」

「そっか。仕方ないね。
頑張って!松田刑事?」


ポンっと肩に手を置いて、へへっと笑いながらそう言うミコト。

来月からは、こうして毎日ミコトの笑顔を見てから仕事に行けるんだと思うと、身体が軽くなった気分だ。


「来月、休み取るから一緒に引っ越し作業しようぜ」

「うん!
家具とか家電とか、足りない物の買い物もしたいな」

「んじゃあ、そのために俺は必死で働いてくるわ。」


これまで、家族のために頑張るってどんな気分なんだろうなと思っていた。

親父の一件があって、所詮家族だろうか恋人だろうが、所詮人は独りだと思ってた。

自分が一番大事だと信じて疑わなかったが、最近ようやく分かった気がする。

大事な人の笑顔を守るために、人は頑張れるんだということを。


「じゃあ、わたしも行くね?
せっかく外に出て来たんだし、今から大学の図書館で勉強する。」

「そっか。気をつけてな。
夜、電話する」


そう言って手を振り、ミコトが駅の改札を通ろうとした時、思わずミコトの手をグッと引いた。


「?なに?」

「キスぐらいさせろ」


そう言って、周りに大勢人がいるにも関わらず、俺はミコトの唇を奪った。

甘い綿菓子みたいな味がした。



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