第28章 はじまりの一歩
松田side
こうして幸せ絶頂のはずの部屋探しがスタートしたわけなのだが…
不動産に到着し、いくつか部屋をピックアップしてもらっている時、俺とミコトの喧嘩が突如として勃発した。
「だから!オートロックは必須って言ってんだろ?」
「でもキッチンが狭いのはヤダ!!」
払える家賃の上限は決まっていて、その二つの希望を叶える家がなかなか見つからず、両者どちらも譲歩しようとしない。
不動産屋の社員も、呆れた顔して俺たちを見た。
「オートロックなんていらないよ!
外は人通りも多いし!」
「俺が当直で帰れねえ夜もあるんだぞ?
絶対にオートロックがないとダメだ」
「でもこんなに狭いキッチンじゃ、お料理するのにすごく時間かかるよ!?」
そんなやり取りを永遠と繰り返している俺たち。
この2人への接客で1日が終わってしまうと思ったのだろうか、不動産屋がある提案をする。
「こちらの物件はいかがでしょう?
ちょうど来月に空く物件なのですが、今日即決して、来月まで待ってもらえるならご予算内の家賃で契約が可能です」
そう言いながら出された紙に書かれた物件を凝視する俺たち。
築浅で、キッチンも広め、オートロックが付いている。
入居が来月になるが、それは百歩譲って仕方ないか。