第28章 はじまりの一歩
お兄ちゃん、陣平くんと一緒に暮らすことになったよ。
忙しすぎて2人の時間が取れないから、やむを得ず的なところはあるけど、嬉しかったの。
陣平くんが、わたしともっと一緒にいたいと思ってくれたことが。
直接伝えたかった。
きっと、優しい顔して笑って、良かったなと頭を撫でてくれたよね。
お兄ちゃんを救えなかった分、必ず陣平くんを救ってみせる。
甘えん坊で泣き虫なお前に、そんなこと出来るのか?と笑われそうだけど、出来るよ。
だって、お兄ちゃんの妹でしょ?
そう話しかけた後、ゆっくりと閉じていた目を開けると、隣でわたしの顔を見て陣平くんが笑った。
「相変わらず長いな。
萩原はそんなにたくさん願い事叶えてくれねぇぞ」
そう言って、お兄ちゃんの代わりにわたしの髪をくしゃくしゃに撫でた。
「陣平くんは何話したの?お兄ちゃんに」
「俺?俺は、ミコトのイビキがうるさくて寝られねえ日が続きませんようにって」
「な!なにそれ!イビキなんてかかないもん!」
わたしがムキになると、陣平くんはハハッと笑いながらわたしを見た。
「ウソ。
お前のこと、俺に任せとけって言った」
「ほんとに?そしたら何て?」
「内緒。俺と萩の秘密」
そして陣平くんは、わたしの頬をむぎゅっと掴んでまた楽しそうに笑った。