第28章 はじまりの一歩
ミコトの自宅のリビング。
すぐ隣には仏間がある。
きっと今からする話を萩も、聞いてくれているだろうな。
もしここに萩がいたら、陣平ちゃん、早く言っちゃえよ。なんて言いながら、それでも両親より厳しい目で俺を品定めするに違いない。
本当に、妹をやるのに相応しい男なのかを。
ミコトの父の顔を随分久しぶりに見たけれど、萩原には似てない。
萩原もミコトも母親似なんだなと思った。
「あれ?陣平じゃないか」
俺たちが来たことに気づいた千速が2階の自分の部屋から降りて来た。
萩原家のリビングで、ミコトの父と母、姉、そして仏間の兄 VS 俺という4対1の構図が出来上がった瞬間だ。
萩原とは対照的に少し厳しそうな父の目を見て、俺は頭を下げながら言った。
「無理を承知で言います。
ミコトさんと、一緒に住ませてくれませんか」
「え…」
ミコトの父と母は2人とも、戸惑ったように声を漏らした。
けれどここで引き下がるわけにはいかない。
ダメだと言われても、何度でも通うまでだ。
「まだ学生のミコトさんを家から出して俺と一緒に住まわせるのは、どう考えても普通じゃないとわかっています。
でも…」
「いいんじゃないか?」
「うん。そうね。賛成」
「…へ??」
突然なんの障壁も無く飛び出したOKに、俺は思考が追いつかずにポカンと間抜けな顔を見せてしまう。