第4章 俺と萩原
萩のお節介は、いつもワザとらしい。
引越し作業のときも、ワックスを買いに行くとか無理矢理な理由で俺たちを2人きりにした。
突然2人きりにされ、俺はガラにもなく何を話せば良いかわからず、淡々と荷物を片付けた。
俺が大人しく他人の荷物を片付けたのは後にも先にもこの時だけだ。
ミコトの大学のこと、俺の警察学校でのこと、何から話そうか。
そう考えて声を出しかけてはやめる。
それをずっと繰り返していた時、ミコトが突然大声を上げた。
そしてその後、何か軽いものが俺の後頭部にゴスッと当たる。
「いってぇな!
何投げたんだよテメェ」
思わずいつもの口の悪さが出てしまうが、そんなもんミコトは気にする余裕もないらしい。
金魚みたいに口をパクパクさせながら顔を真赤にしている。
「あっ!あ…お、お兄ちゃんのバカ!!
バカバカ変態!!」
まあ、萩が変態なのは周知の事実だ。
心の中で静かに同意しながら、ミコトが投げたものを拾い上げた。
ただのコンドームの箱を顔を真赤にして投げつけたミコトは、俺が「ただのゴムじゃねえか」と言うと、ふくれっ面をしながら俺を睨んだ。
「…陣平くんも使うんだ」
「だから、使わねえ男の方がヤベェって…」
「そうじゃなくて!
…それ使うような人、いるんだ…」
あの時、海でミコトにごめんと言ったときと同じ顔をしている。