第26章 幸せな提案
そう言いながら、佐藤は俺を見た。
「あなたもそうでしょ?
松田くん、何だかんだ言いながらちゃんと最後まで私に着いてきてくれたし。
ま、これからバディとしてよろしくね。」
「はいはい。こちらこそ。」
その時、俺のポケットの携帯が鳴った。
着信音を聴いただけで、誰からの電話かすぐに分かる。
俺はセンパイといるにも関わらず、お構いなしに電話に出た。
「もしもし?ミコト?」
「わ!出た!」
俺が出たことに驚いた様子のミコトの声を聴いて、俺は思わずプッと吹き出した。
「俺はオバケかよ」
「だって!ダメ元でかけてみたから…
出ると思ってなかった!」
「何?珍しいな。お前からかけてくんの。
いつも俺に気遣ってかけてこねぇくせに」
特に、俺が一課に異動してからは電話をかけるのは毎回俺だった。
まあ、俺の身体が空いている時間しか電話出来ないから当然と言えば当然だが。
「あ、あのね。
今駅前の不動産屋さん通りかかったら、良さそうな物件があったから…」
「だからー。気が早いってお前」
「だよね…ごめん」
俺にどやされて、電話口でしょぼくれるミコトの声を聞くと、思わず顔が緩んだ。
「…いや。早くねえな。
今度の日曜日、休み取れたからお前の実家行く。」
「ほ、ほんと?」
「あぁ。だから、その物件の情報、写メで送ってくれよな」
「うん!両親にもそう伝えておくね!」
「いや。俺からちゃんと伝えるから、とりあえずは内緒にしておいてくれ。」
「了解であります!」
さっきとは打って変わって、上機嫌の俺の彼女。
まあ、結局2ヶ月以上まともに会えてなかったわけだ。
会えたのは、あの夜のたった1時間。
そう思うと、ミコトに会いたくてたまらなくなった。
「頼むわ。…あと、今日は早く帰れそうだから、授業終わりに時間あったら俺の家来いよ」
「行く!行く行く!」
「決まりな。じゃ、また帰る時連絡する。」
「あ、陣平くん!」
「ん?」
首を傾げると、ミコトは可愛い声で言った。
「お仕事、お疲れ様!」
「…サンキュー」
ピッ