第26章 幸せな提案
電話を切った後、思った。
これからは、毎日家に帰ったらミコトがお疲れ様と言って迎えてくれるんだと。
いや、まだあいつの両親に許しを得ていないから分からねぇけど…
そう思っていると、隣で黙ってコーヒーを飲んでいた佐藤が俺を横目で見ながら尋ねた。
「…彼女?」
「あぁ。珍しく、向こうからかけて来た」
「どんな子なの?…可愛いの?」
そう聞かれ、俺は迷いなしにこう答える。
「すっっっっげえ可愛い」
「普通、謙遜してそんなことないって言うもんじゃない?」
「だって、マジで可愛いから。
どんな女優やアイドルよりも可愛い。
俺目線でな」
「はいはい。ご馳走様。」
佐藤は何故か不機嫌そうに俺を睨むと、ゴミ箱に空になった缶を投げ入れて、屋上から出て行った。
「…ノロケすぎたか」
自分自身でそうツッコミながら、俺は残りのコーヒーを飲み干して、癖になってる萩原へメールを携帯でしたためる。
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萩原。
そっちはどうだ?何か変わりあるか?
俺は今日ようやく配属当初から追っていた犯人を送検することが出来た。
2ヶ月もミコトを抱けてねぇんだぜ?
ありえねぇだろ。
そんなこと言うとお前はまた、俺の妹に手ェだしやがって。って俺を小突くんだろうな。
そんな萩原に、俺はもう一度会いてえな。
また、メールするよ。じゃあな。
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高速で携帯に文字を打ち込んで、送信ボタンを押すけれど、その後すぐにエラーメールが返ってくる。
もう萩原のアドレスはこの世に存在しないからな。
俺の携帯にはいつの間にか萩原に送り損ねたメールが溜まって行く。
それはきっと、あの爆弾犯を捕まえるまで続くんだろう。
必ず、俺がこの手で捕まえてやる。
そう固く誓い、残りの缶コーヒーを一気に飲み干した。
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