第26章 幸せな提案
けれどミコトは、俺にいつもの可愛い笑顔を向けながら言う。
「そんなことない。
陣平くんは、わたしを幸せにしてばっかり。
だって、こうやって会いにきてくれたでしょ?」
「…敵わねぇな。さすが萩原の妹だ」
いつも俺の心を軽くしてくれた兄貴にそっくりだよ。
そう思いながら髪を撫でると、さっきよりも幸せそうな顔してミコトが笑う。
「それに、もうすぐ一緒に住むんだし…」
「お前の両親が良いって言ったらな」
それが一番の難関なんだよ…と頭を掻くと、ミコトはあっけらかんと答える。
「良いって言うよ。
お兄ちゃんか死ぬ前に一緒に住めよって言ったもん!って言えば」
「お前…なかなか卑怯だな」
「卑怯な手を使ってでも、陣平くんといたいんだよ」
「…そっか。」
俺もだ。
俺も、お前ともっともっと一緒にいたい。
心で思ったことを口に出して伝えてやらねぇと。
そう思うのに、俺から出た言葉はシンプルすぎた。
「ミコト」
「なに?」
「好き」
たった2文字。
そう伝えると、ミコトは俺を見つめ返しながら問う。
「1ヶ月会えなくても、気持ち離れてない?」
「全然。」
気の利いたことは一つも言えない俺に、ミコトは嬉しそうに抱きついてきた。
「わたしも、陣平くんが大好き」
その肩を抱きながら思った。
この先もずっと、俺がこいつを幸せにしてやる。と。