第26章 幸せな提案
今張り込み中の容疑者宅は、偶然にも萩原家の近所だったのだ。
「仮眠取るんなら、停めてほしい場所があんだ」
「?どこ?」
「ここの公園」
カーナビの地図に表示されている公園を指差した。
ミコトの自宅から目と鼻の先にある公園だ。
「あらそう。じゃあ、そこに停めるわ」
何も知らない佐藤は、そう言って車をその公園まで走らせると、路肩に駐車した。
そしてすぐに運転席のシートを後ろに倒しながら佐藤が言う。
「どうせ、明日の朝まで動きはないし、今のうちに寝ちゃいましょ」
「あ。俺、ちょっと出てくるから」
「はあ!?何しに?!」
「仮眠より、大事なコトだよ。
1時間ほどで戻ってくるから、あんたは気にせず寝ておけよ。
んじゃあな」
「ちょ、松田くん!?単独行動はNGよ!?
もー!勝手なんだから!」
怒る佐藤を車の中に置き去りにして、俺は急足で萩原家へと急いだ。