第26章 幸せな提案
松田side
一課に配属されて1ヶ月。
ミコトには一度も会えてねぇ。
ミコトは俺の渡した合鍵で、俺のアパートに来て待っていてくれたことはあったが、俺はその日帰宅が深夜になり、ミコトは終電前に自宅に帰った。
さすがに、オートロックもついてねぇアパートに一人で深夜まで居させるわけにはいかねぇからな。
俺が帰らなければ大通りを通って終電で帰る。
それがミコトに約束させた安全策だ。
ミコトが俺を待っていた日はすぐに分かる。
冷蔵庫を見ると、タッパーにおかずが入ってあり、付箋には可愛い字でメッセージも書いてくれてあるからだ。
会えなくても、ミコトのぬくもりを感じることができる。
会えなくても、俺がミコトなことを好きだと言う気持ちは少しも薄くならない。
けど、毎日思う。
ミコトの笑った顔が見てえ。
ミコトのことを抱きしめてえ。
ミコトにキスをして、舌を入れて、そのままベッドで…
考えれば考えるほど、ミコトに会いたくなる。
正直、疲れというよりもミコトに会いたくて身体が悲鳴を上げているほどだ。
けれど、配属されたばかりで事件捜査の勝手もわかってねぇ俺は、佐藤に言われるがまんま大人しく捜査に加わるしか無かった。
「ふわぁあ…」
今日も夜通し張り込みだ。
佐藤が運転する車の助手席で盛大にあくびをする俺を見て、佐藤がため息をついた。
「仕方ないわね。
ここ最近、連日張り込みだったし、
どこかに車を停めて、少し仮眠とりましょう」
そう言って、車を停める場所を探す佐藤を見て、俺はピンと閃いた。