第25章 2年も早い異動
松田side
結局事件は解決せず、しかもこれはどうやら連続殺人事件と同一人物の犯行らしい。
現場での捜査を終えて警視庁に戻ってきたのは午後23時だった。
「松田くん。
1時間仮眠をとったら捜査会議よ」
「マジかよ…」
初日からこれってやっぱりブラック企業以外の何者でもねぇな。
女で毎日これをこなす佐藤は、とんでもねぇフィジカルの持ち主だ。
そう思いながら、俺はとりあえずタバコを吸おうと屋上の喫煙スペースへと向かった。
「どこ行くの?!」
「タバコ。会議の時間になったら呼んでくれよ」
「ちょっと!わたしの方が指導係よ?!」
怒る佐藤を放置して、俺はタバコとライターと携帯だけ持って喫煙所にやって来た。
タバコに火をつけ、肺に入れて煙を吐き一息ついた後、俺は携帯で時刻を確認する。
23時半か。
もう寝てっかな…
そう思いながら、ダメ元でミコトに電話をかけた。
プルルル
プルルル
呼び出し音のコールが5回を過ぎた頃、もう寝たのかもと切ろうとしたその時
「陣平くん?!」
聴き心地のいい可愛い声がした。
「おう。起きてたか」
「今から寝ようと思って歯磨きとかしてた!
陣平くんは?」
「俺はまだ警視庁」
フーッとタバコを吐きながら、目を閉じてミコトの声に耳を傾けると、身体の疲れが全部取れていく気がした。
「まだ仕事なの?
言ってた通り大変なんだね…捜査一課」
「まぁな。初日から引きずり回されてくたくたよ。
お前は?今日何してた?」
「今日はね、大学行って、アユとカラオケに行ったよー!」
「へぇ。2人?」
嬉しそうに話すミコトの声を聞いて、つられて口角を上げながら俺はタバコの煙を吐いた。