第25章 2年も早い異動
早速、俺の席を用意して指を指した。
「松田くんの席はここ」
「どうも」
自席に案内されぶっきらぼうに腰掛けると、俺の指導係に任命された佐藤美和子が俺を睨みながら言う。
「あなたねぇ。
私、一応先輩なんだけど」
「…歳は?」
「え…23だけど」
「なら、俺の方が警察官としては1年先輩だな」
そんな屁理屈を言って敬語すら使おうとしない俺を、佐藤はまたジロ…と睨んだ。
その時、デスクに置いてあった電話がプルルルと鳴った。
「電話、鳴ってるわよ」
「あぁ。俺、電話出るの嫌いだから」
「っもう!」
あまりやりすぎたらゲンコツで殴ってきそうだなこの女。
少しだけ、千速に似ている気がした。
見た目とかじゃなく、中身が。
佐藤は痺れを切らし、自らその受話器を上げた。
「はい。警視庁捜査一課。
…はい…え?殺人事件?
わかりました。向かいます」
そう言って電話を切った後、まだ配属されたばかりの俺の腕を掴んで佐藤が言った。
「ほら!米花ショッピングモールで殺人事件!
急行するわよ!」
「いきなりかよ…」
俺はもう既に捜査一課強行犯係の人間みたいだ。
佐藤に腕を引っ張られるがまま、初めての殺人事件の捜査へと駆り出された。