第25章 2年も早い異動
松田side
警視庁捜査一課
ドラマや創作物で警察が扱われるとき、最も題材とされる頻度が高い、いわば警察の花形部署
刑事ドラマに憧れて警察官になる奴の大半は捜査一課に配属を希望している。
その一課の中でも、俺が転属されたのは強行犯係。
扱うのは主に殺人、強盗などの凶悪犯事件。
俺が希望していた、爆破事件を扱うのは特殊捜査係だ。
つまり俺は、異動希望は叶えてやるから頭を冷やせ。と言わんばかりに、来たくもない部署に回されたってわけだ。
そんなやる気のない態度が前面に出ていたのか、強行犯係の面々は俺をジロ…と睨むように眺めている。
そんな中、俺の新しい上司となった目暮警部がご丁寧に俺の紹介を始める。
「彼が本日付で捜査一課強行犯係に配属された松田陣平くんだ!」
マジかよ…
もういい大人なのにこんなふうに誰かに紹介されることが馬鹿らしくて笑っちまう。
俺のこの心情をよそに警部サンが俺の紹介を続けようとしているから、俺は思わずそれを遮った。
「彼は去年まで警備部機動隊に所属していた変わり種でな」
「よしましょうや、警部さん…」
上司である目暮警部の話を途中で遮った期待の新人の俺。
周りの空気がピリつくのも厭わず、俺は続けた。
「田舎から出てきた転校生じゃねーんだから、
うざってぇ自己紹介なんざ意味ないでしょ…
こっちは来たくもねぇ係に回されて切れかかってるって言うのによぉ」
嫌味たっぷりな俺のこの言葉に、捜査一課強行犯係の強面刑事たちがざわつきながら俺の方を一斉に睨んだ。
警部さんはさすが管理職。
この凍りついた空気を何とか和ませようと、俺にそうだな…と笑いかけながら俺の教育係に佐藤美和子を指名した。
指名されたのは、強行犯係唯一の女性刑事。
このブラックな強行犯係で紅一点やってるってことは相当な猛者だな。
佐藤美和子は俺の指導係に指名されて心底嫌そうな顔をした。
俺だって嫌だよ…
女と仕事とか、やりづれぇだろ絶対。
そうは思いつつも、ぺーぺーの俺は文句を言うこともできず、佐藤の後ろについて回ることになる。