第25章 2年も早い異動
今日は学部の女の子たちと女子会だ。
今女子大生の間で話題のお洒落なダイニングレストラン。
お肉料理と赤ワインが運び込まれたまさにその時だった。
「ねぇ知ってる?
彼女にしたくない女ナンバーワン
女医なんだってー!」
目の前の女の子がそう言いながら、ワインを一気飲みするのを、わたしはうんうんと頷きながら見てた。
女の医者は、ほんっとうにモテない。
それはわたしが証明済だ。
まず会話をすると、どうにも高飛車に見える。
こちらは全くそんなつもりがない謙遜が、なぜか相手に嫌味にすら聞こえてしまう。
大学病院に勤務する医師は、毎日山のようにやってくる患者の対応に追われ、クリスマスやお正月などのイベントとは無縁だ。
年頃の娘がする香水はできず、身体に染み付くのは消毒液の匂い。
そんな女の子が、普通の男性にモテるはずがない。
実際、合コンに行っても「医者」とは言わずにあえて「医療従事者」と濁す女医も多い。
わたしも、陣平くんが亡くなってから新出くんに告白されるまで、一度も男性といい感じになることはなかったし、アプローチされたこともなかった。
「やっぱり医者は医者同士結婚するしかないのかなー。
合コン行っても、医者の卵ですーって言ったら大抵の男は逃げていくし」
隣でアユがナッツをつまみながら不満げに言う。
わたしも笑いながらそれに同意した。
「実際、医者同士で結婚してる人多いもんね。」
「そんなこと言ってー、ミコトは陣平さんがいるでしょ?」
「え!?」
「結婚の話とかしないの?」
唐突に言い出したアユの発言に、その場にいた女の子全員がわたしを見た。
医学部学生といえども、華の女子大生。
医学書の話なんかより、恋の話のほうがよっぽど盛り上がる。
「聞きたい聞きたい!」
「しっ!しないよ!
まだ学生だし付き合って1年しか経ってないし!
考えたこともなかったよ!」
「じゃあ、もし今プロポーズされたら、断るの?」
「そりゃあ……もちろん、陣平くんと結婚できるなら喜んでOKするけど…」
でも、陣平くんって結婚とか一切考えて無さそうじゃない?
仕事第一って感じだし、お兄ちゃんの事件が解決するまではきっとそういう話はないよね…?