第25章 2年も早い異動
期待を込めた目で上司を見るが、少し気まずそうに目を逸らされた。
これは雲行きが怪しい…と思っていたら、案の定上司から真実が告げられる。
「いや、一課は一課なんだが…
お前が異動する先は特殊犯係ではなく、強行犯係だ」
「…は?」
「やはり、敵討ちを目的とした異動は認められない。
一課には配属してやるから、強行犯係で頭を冷やせ。ってことらしい」
「い、いやちょっと待ってくださいよ!」
「松田。警察というのは組織だ。
組織の命令は絶対だ。わかるだろ?」
「けど!」
「まずは強行犯係で腕を上げて、誰もが認める刑事になれ。
そしたら異動希望だってちゃんと通るから。」
それ以上、食ってかかろうとしたが、やめた。
人事を決めるのは俺の上司じゃねぇ。
この人に噛み付いたって仕方ないことだ。
喜ぶべきなんだろうな。
特殊犯係だろうが、強行犯係だろうが、
捜査一課は捜査一課だ。
このまま爆処にいるよりかは、幾分マシなのかもしれない。
思うように希望が通らないことにイラつく自分に必死に言い聞かせながら、俺は自分のデスクを整理した。
と言っても、机の上にも中にも、萩原の事件の資料しか置いていない。
警察官の机の上とはとても思えないぐらい、何にもない机の上。
そこを綺麗にするのに、5分も要らなかった。
とりあえず明日の朝、荷物を一課のデスクに運ぶか。
そう思い、片付けた荷物を一旦段ボールに入れ、自分のデスクのそばに置いて執務室を後にした。
そうだ。
異動が決まったと、一応ミコトに電話してやるか。
捜査一課に異動となると、きっとしばらく思うように会えなくなるだろうしな。
そう思い立った俺は、家路につきながら携帯でミコトに電話をかけた。