第24章 風邪引き彼氏 ☆
寝てるかな?と覗いてみると、陣平くんの目がゆっくりと開いた。
「…萩原」
「え?なんで苗字呼び捨て?」
突然、萩原と呼ばれたわたしは首を傾げて陣平くんを見る。
すると陣平くんは、はぁ…とため息を吐きながら言った。
「や。悪い。
萩に見えたから…焦った」
「お、お兄ちゃん!?」
「お前の目元、萩にそっくりだな。
ちょっとタレ目なとこが」
はは…と笑いながらわたしの頬に手を伸ばすと、わたしの頬を撫でながらじっと見つめてくる陣平くん。
「もう…お兄ちゃんと間違われるなんて、ちょっとヤダ」
「そんな事言うと、天国の兄ちゃん泣くぞ」
そんなやり取りが出来るぐらいには、体調はマシになったようだ。
ホッと安心しながら、ベッドサイドのテーブルにトレーを置いた。
「お粥作ったの。食べられる?」
「ん。腹減った…」
そう言うも、陣平くんはお粥が入った器にも、備え付けてあるれんげにも手を伸ばそうとしない。
「後で食べる?」
お腹は空いているけど、食欲は無いのかな…?と思い、そう聞くと陣平くんは、む…とわたしを見つめながら不服そうに言う。
「食べさせてくれるんじゃねえの?」
少し拗ねたようなその顔が可愛すぎて、わたしの胸はきゅうんと高鳴る。
「食べさせてほしいの?」
わたしは、ニコニコと微笑みながら、まるで子供に尋ねるような声で陣平くんに聞いた。
弱っている彼にこんな意地悪するなんてと思う反面、こんな可愛い陣平くんは今日を逃すと当分見られない気がする。
陣平くんは、むーーっと口をへの字に曲げた後、これまでより更に不服そうに言った。
「…食べさせてほしい」
「アーンしてほしいの?」
「………っ…やっぱいい。いらね」
一瞬、アーンしてほしいと返事が返ってくるかと思いきや、陣平くんは悩んだ挙げ句羞恥心が勝ったらしい。