第24章 風邪引き彼氏 ☆
わたしの味が、陣平くんの安心できる味になる…?
目から鱗のその言葉に、確かに…と頷いていると、降谷さんは続けて言った。
「これからいくらでも、松田と一緒の時間を過ごしていけるんだから。
悩んでる時間がもったいないですよ。」
「…そうですね。
うん。わたしがいつも風邪の時食べてるものを作ることにします!」
「それがいい。
じゃあ、僕はこれで」
そう言って颯爽と去ろうとする降谷さんを、わたしは思わず呼び止めた。
「あ、降谷さん!」
「?」
「陣平くんが、降谷さんとなかなか連絡が取れないって心配してましたよ…?」
「あぁ…ちょっとこのところ、忙しくて。」
そう言って降谷さんはいつもの完璧な笑顔で笑う。
前に、陣平くんが言ってた。
ゼロは何でも出来るスゲーやつだけど、たまにどこか寂しそうな顔して笑う瞬間があるんだと。
それに、何でも出来るが故にその分周囲からの期待は大きく、それに答えようとする使命感でがむしゃらになっているフシがあるとも。
「降谷さんには、いるんですか?
風邪の時に、側にいてくれる人…
家族でも、兄弟でも、恋人でも…」
降谷さんが心を許せる人…
そう尋ねると、降谷さんは笑った。
「僕の恋人は、この国だから。
…じゃあ。」
そう言うと、降谷さんは自分の買い物を済ませるために足早にレジへと向かった。
降谷零さん…
お兄ちゃんの同期の中で、唯一生きているひと…
孤高の存在って感じだ。
あと、笑顔の奥が見えないと言うか、思ってること全部隠して笑ってそうな、そんな雰囲気の人。
とりあえず、降谷さんは元気そうだったってことだけ陣平くんに伝えてあげよう。
心配してたし。
そう思いながら、カゴの中に卵とネギ、りんごとパイナップルを入れ、レジに向かった。