第3章 死ぬということ
葬儀が終わり、帰宅することになった。
両親と姉とタクシーで一緒に帰るわけだから、葬儀が始まってからずっと繋いでる陣平くんの手は、もう離さないといけない。
すると、姉はわたしに優しく言った。
「今日はご飯たくさん食べられるように、お腹空かせて帰ってきな?
…陣平。ミコトを歩いて送ってくれ」
「…しゃあねぇな」
ハァッとため息をつきながらも、陣平くんは繋いだままのわたしの手を引いた。
「行くぞ、ミコト」
「う、うん」
こんな風に手を繋いで歩いてると、昔を思い出す。
小学生の頃、お兄ちゃんと陣平くんに遊んで欲しくて、2人を追いかけていつのまにか迷子になった時、陣平くんがわたしを見つけてこうやって手を引いて家まで帰ってくれた。
懐かしい。
いつから、わたしたちは何を間違ったのかな
「…思い出すな。昔を」
「え…」
少し前を歩く陣平くんが徐にそう言った。
「ほら、昔はよく迷子になったお前をこうやって手ェ引いて、送ってやっただろ?
忘れちまったか?」
「…今、わたしもそのこと思い出してたよ」
そう言うと、陣平くんはフッと優しく笑って、また前を向いて歩き出した。
ねぇ、陣平くん。
わたしは、まだあなたの妹なの?
もう19になったわたしと、こんな風に手を繋いで歩いてるのは、相変わらず妹だと思っているから?
わたしは、あの高2の夏、陣平くんに告白した時から、少しも変わってないよ。
そればかりか、会えない間も気持ちは膨らむばかりで、勉強してる時以外はずっと、陣平くんが脳のほとんどを占めてた。
今だって、わたしの願いは変わってないよ。
陣平くんの、彼女になりたい。
線香花火に乗せてそう願ったこと、ずっと覚えてる。
「陣平くん」
「んー?」
最後に、お兄ちゃんが言ったの。
諦めんなよ。陣平ちゃんのこと
お兄ちゃんがくれたメッセージを胸に、わたしはまっすぐに陣平くんを見た。