第3章 死ぬということ
火葬が終わった今も、陣平くんは変わらずわたしの手を繋いでくれてる。
このまま、離さないでほしい。
なんて、言ったら何か変わるかな…
「松田」
「おー!お前ら」
陣平くんの苗字が誰かに呼ばれ、わたしのそっちを見た。
警察官の制服を着た3人が立ってる。
「ミコト、紹介する。
萩と俺の同期。
左から、伊達、諸伏、んで降谷」
「あ…萩原研二の妹です」
「うん。良く話してたよ。
妹が可愛すぎて辛いって」
そう言って、真ん中にいた諸伏さんは続けた。
「辛かったね。…お兄さんをこんなに早く」
「…はい」
俯くわたしを見て、その横にいた降谷さんと言う人が、わたし何かを差し出した。
「これ」
「?」
なんだか分からないまま受け取ると、そこにはお兄ちゃんの字で書かれた報告書があった。
「警察学校のときの日誌。
昨日、当時の教官に無理言って貰ってきたんだ。
これ提出した時、萩原ものすごく怒られて、みんなで笑ったよな」
そこには
[妹が、俺がいなくて寂しいと言ってる気がする。
早く卒業して、家帰ってミコトの顔が見たい。
もうホームシックです]
兄の字でそう書かれてた。
「普通、日誌にそんなこと書くかー?
バカだな、あいつ」
隣で、陣平くんが笑う。
わたしの知らないお兄ちゃんは、まだまだいっぱいあるんだね…
その紙を受け取って、わたしはぎゅっと抱きしめた。
「じゃあ、僕たちはこれで。
年忌法要は、毎回参加するから。
ミコトさんも、またお会いすることになると思います」
降谷さんがそう言うと、他の2人もわたしに会釈をしてその場を立ち去った。