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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第3章 死ぬということ




並木町の途中、イチョウの木のまだ緑の葉がざわめく。


「わたし、陣平くんのこと、好きだよ」

「…突然だな」


陣平くんは驚いたように目を見開いて、わたしをじっと見た。


「突然じゃない。
あの日、あの夏の海で、陣平くんに振られてからもずっと、今も。
陣平くんが好き。
陣平くんの、彼女になりたい」


息をつくのも忘れて、思いの丈をぶつけたわたしを見て、陣平くんは困ったように眉を下げて笑った。


「萩が置いてった宝物に、手ェ出すことなんて出来ねぇよ」


二度目の告白

その返事も、ノーだった。


下を俯きかけたとき、わたしはまたハッとお兄ちゃんの言葉を思い出す。

諦めんなよ。陣平ちゃんのこと



「…諦めない」

「あ?」

「陣平くんが、わたしのこと好きになってくれるまで、絶対絶対諦めないから!!」


勢いよく宣戦布告をしたわたしを見て、陣平くんは目をまん丸にして固まった後、吹き出して大笑いし出した。


「っふ…あはははは!」

「な!なに?!なんで笑うの!」


決死の告白の後に大笑いされたわたしは、顔を赤くして陣平くんを睨んだ。


「だってお前、昼間はギャンギャン泣いてた癖して!
すっげー気合いじゃねぇの」

「だ!だって!!
お兄ちゃんが!」


わたしの口からまるで当たり前みたいにお兄ちゃんという単語が出てくる。

もう呼べないのに、わたしの身体に染み付いてるんだ。

お兄ちゃんと言ったわたしを、陣平くんは優しい顔して見ながら首を傾げた。


「…?」

「お兄ちゃんが、諦めるなって言ってくれたから」


それだけ言うと、また泣きそうになる。

だけど、いつもわたしの味方だったお兄ちゃんはもういない。

強くならなきゃ。
ちょっとのことで、へこたれて諦めちゃダメだ。

涙が溢れないようにグッと力を入れて、真っ直ぐ陣平くんを見ると、陣平くんはまた優しく笑って言う。


「…楽しみにしてるよ」

「え?」

「お前を好きになれる日を、楽しみにしてる」


そう言って、わたしの手を引いて、また歩き出した。


「…絶対、絶対、好きにさせて見せる!」

「はいはい」


こうして、わたしの恋はまた動き出した。
無情にもお兄ちゃんの死と引き換えに、ゆっくりと。




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