第23章 喧嘩のとある日 ☆
昼間、陣平くんと喧嘩をして以来のこの部屋に、またとぼとぼと戻って来たわたし。
思えばクッションを投げつけてブチギレたわけだから、わたしも悪かったよね…
そう反省して陣平くんに謝ろうとしたとき、陣平くんがわたしの身体をぎゅーっと抱きしめた。
「あ、あの…陣平くん…」
「千速に聞いた。
俺と会う日、お前が家でどんなふうに準備して、幸せそうにしてるかって。
そういうの、察してやれなくて悪かったよ。」
「…陣平くん、何もわかってない」
「あぁ。
そろそろお前が怒ってる理由を教えてくれよ。
わかんねぇから…」
考えても考えても、陣平くんには分からないらしい。
これ以上喧嘩を長引かせても、意味ないよね…
そう思ったわたしは、陣平くんにぽつりと溢した。
「…お姉ちゃんみたいになれって言った」
「え?」
「喧嘩した時、千速みたいに大人になれって言われたのが…悲しかった」
理由を言うと、わたしの瞳から涙がこぼれ落ちた。
言葉にしたらまた悲しさが込み上げて来て、泣き虫なわたしは涙を止める術を知らない。
「あれは、そういう意味で言ったんじゃねえよ。
つい、カッとなって」
「でも!無意識ってことは、やっぱりお姉ちゃんみたいな大人な女がいいってことじゃん。
陣平くん、お姉ちゃんのこと好きだったくせに」
結局また言い合いみたいになるわたしを見て、陣平くんはやれやれとため息をついた。