第23章 喧嘩のとある日 ☆
映画が終わり、シアターから出たわたしたち。
時刻は夕方。もうすぐ夕食の時間だ。
「萩原さん、この後予定ある?」
「え?」
「映画のチケットのお礼にご飯でもどう?
何でも好きなものごちそうするよ」
そう言って新出くんは優しく笑った。
ちょうどその時、わたしのお腹がぐるるると鳴り、わたしは思わずお腹を押さえた。
「お腹、空いてるみたいだしね」
「え、えへへ…じゃあ、お言葉に甘えて…」
そう言って、新出くんとご飯に行くことを了承しようとしたとき、わたしの腕を誰かが掴んだ。
驚いてそちらを振り返ると、はあはあと息を切らした陣平くんがいる。
「じ、陣平くん?」
なんで陣平くんがここに!?
しかもめちゃくちゃ部屋着だし!!
ここはおしゃれなショッピングモールの中にある映画館。
その中で、陣平くんの今のスウェットにジャージという服装が悪目立ちしている。
陣平くんはそんなことお構いなしに、わたしの腕を掴んで言った。
「悪かったよ」
「え…?」
「お前が今日を楽しみにしてたこと、知ってるくせにあんな態度取って。
…反省してる」
あの陣平くんが素直に謝ってる!!
思わず目を丸くして彼を見ると、陣平くんが新出くんに気づいて彼をジロ…と睨んだ。
「プリンス…!」
「…その節はどうも」
明らかに笑顔がひきつる新出くん。
あの学祭での陣平くんとのキスを思い出したんだろうか。