第23章 喧嘩のとある日 ☆
とにかく、陣平くんの家に行ってみよう。
そう思ったわたしははやる気持ちを抑え、わたしはタクシーを捕まえて陣平くんの家に向かった。
道中は気が気じゃなかった。
救急車とすれ違わないか…
どこかで事故が起こった様子はないか…
あらゆる可能性を考えていると、いつの間にか陣平くんのアパートの前に到着した。
カンカンと音を立てて階段を駆け登り、合鍵で玄関のドアを開けると、いつも彼が私服の時に履いてるスニーカーがまだ玄関にある。
まさか…
そう思い、中に入るとベッドの上でくかーーと寝息を立てて眠る陣平くんがいた。
「いた…」
陣平くんが生きてることにホッと胸を撫で下ろしたわたし。
生きてる。
それだけで、待ち合わせに盛大に遅刻したことなんてチャラにできる。
今からでも映画の時間には十分間に合うし。
そう思ったわたしは眠る彼の名前を呼びながら肩をゆすった。
「陣平くーん!起きて?」
「んー…うるせーな…寝かせろよ」
「今日デートの約束してたでしょ?」
そう言うと、陣平くんはものすごく不機嫌そうな顔をしながら身体を起こした。
「…ねみぃんだよ俺は…
悪いけど今日はパス」
「え…パスって…」
「昨日久しぶりに同僚と飲みに行って頭いてーんだよ」
そう言って陣平くんは眉を顰めて布団を鼻までかぶった。
陣平くんと映画を見るのを楽しみにしていたわたしは、どうにか陣平くんを起こそうと試みる。
「でも、この観ようねって言ってた映画、今日までだよ?
チケットももう買ったし…」
「んー。あんまりギャーギャー騒ぐなよ…頭に響く…」
気だるそうにそう言って耳を塞ぐ陣平くんには、さすがのわたしもカチンときた。
「ギャーギャーなんて言ってないでしょ?!」
「友達と行けよ。とにかく俺は今日はムリ
昼過ぎまで寝るから」
「そんな、今日いきなり誘える子なんていないよ…
アユはバイトだし…
陣平くん、勝手すぎる」
そう言うと、陣平くんは悪びれもせずにしっしとわたしを手の甲で追いやる仕草をしながらまた布団を被る。