第22章 ゲレンデに溶ける恋 ☆
松田side
風呂でミコトを抱いてひたすらにイチャイチャしたあと、2人で髪を乾かし合いっこをし、手を繋いだままベッドに入った。
「陣平くん…ぎゅってして?」
「来いよ」
腕を広げてやると、ミコトはベッドの中でモゾモゾと身体を動かし、俺の腕の中にぽすっと収まった。
「ちっせぇ身体」
「…陣平くん。
明日もスノボ教えてくれる?」
「え?だってお前…」
スノボやる余裕あんのか?
さっきあんなことあったのに。
そもそも散々転びまくって、スノボはもう懲り懲り!って感じだったくせに。
そう思いながらミコトを見ると、ミコトは笑って言った。
「あんなの、大したことじゃ無いから。
…未遂だったし」
「大したことだろ…」
「でもわたしは、あの人たちに襲われるよりももっと絶望することを知ってるから」
「なんだよ?」
「…陣平くんが、わたしの前からいなくなること。
それに比べたら、大したことじゃ無い」
なんだそれ…
ほんと、こいつはたまにそんなこと言うよな。
その度に俺は、いなくならないと何度も言ってるのに。
「だから、平気だよ?
陣平くんスノボ好きなら、わたしも上手になりたい。」
「…しゃあねえな。
明日はケツぺったんこになるまでしごいてやるよ」
笑いながらわしゃわしゃとミコトの髪を撫でると、ミコトもくすぐったそうに片目を瞑って笑った。
初めての旅行。
こいつにとっては、全部がいい思い出じゃなかったかもしれない。
俺にとっても、ミコトが襲われてるところを見つけた瞬間は最悪の瞬間だった。
けれどきっと、この先何年経っても、変わらず鮮明に思い出せるんだと思う。
ミコトのこの手の温もりも、笑った顔も、全部覚えてる自信がある。
そう思いながら、ゆっくりと瞼を閉じていくミコトの寝顔を飽きるまでずっと眺めていた。