第22章 ゲレンデに溶ける恋 ☆
「さーせん、お兄さん方。
俺、ボード下手くそでー。
冷たかったっすか?」
「あぁ!?冷てえに決まってんだろ?!」
「へえ、そりゃよかった。
テメェらの腐った根性、雪が冷却してくれただろうしな。」
「なんだと!テメェ!」
そう怒声を吐きながら陣平くんに掴みかかろうとする男を、陣平くんは容赦なく拳で殴った。
現職警察官が一般人を殴るなんて、下手をすれば免職処分なのだけど、陣平くんはお構い無しと言う感じだ。
ドコッ
「うっ…!」
「今度ミコトに手出そうとしたら、殴るだけじゃ済まねぇからな」
鋭い眼光でそう言い放った陣平くんはすぐにわたしのところへと走ってきた。
「ミコト!怪我ねえか!?」
「う、うん。大丈夫だよ」
「ったく。なんでまたあいつらに絡まれてんだよ。
俺がちょっと目を離すとこれだぜ」
ぽんぽんとわたしの髪を撫でながら、陣平くんがため息を吐いた。
「あの人達が、女の子にしつこくいいよってたから…
思わず雪玉投げたら当たっちゃったの」
「はあ!??」
陣平くんは呆れMAXといった感じでわたしを見た。
「お前、なんつーことを…」
「だ、だって!つい…」
「正義感が強いのは良いけど、そのうち痛い目見るぞ」
「でも、陣平くんが助けてくれるもん。
今だって」
「俺がいつも一緒にいるわけじゃねえだろ…
頼むからもうちょっと危機感持ってくれよ」
はあーっとため息を吐いてわたしをぎゅっと抱きしめる陣平くん。
陣平くんはもうわたしを妹とは思えないと言っていたくせに、過保護なのは変わらないのね。
「今度から、俺がいないときに無茶するな。
わかったな?」
「はあい…」
しゅんと下を向くと、陣平くんはわたしのほっぺをむぎゅっとつねって笑った。
「もうスノボも雪だるまも十分楽しんだろ。
カニ食いに行こうぜ」
「カニ!!!」
しゅんと下を向いていた表情から一変、カニと聞いてぱあっと笑顔になるわたしを見て、陣平くんはまた呆れたように言った。
「相変わらず食い意地の張ったやつだな」
そんな憎まれ口を叩きながらも、わたしの手をギュッと握って、わたしたちは手をつないだままホテルのレストランへと向かった。