第22章 ゲレンデに溶ける恋 ☆
俺の撫で方のせいで、ズレたニット帽を直しながら、ミコトは余裕ぶっていると言いながら俺を睨んだ。
「ミコト。そんな顔すんなよ。
ほら、これで下まで滑ったら一回休憩しようぜ?」
「…カレー食べたい」
「俺も」
そう言って笑いかけると、ミコトも少し嬉しそうに笑った。
単純かよ。
と言うか、可愛いんだよなお前は結局。
そう思いながらミコトと一緒に滑り出すスタート地点に立つと、ミコトがまたギャーギャーと騒ぎ出す。
「めちゃくちゃ高いじゃん!ここから降りるの?
こんなの転んだら死んじゃうよお!!」
「大丈夫だって、初心者コースだし。
下で木の葉滑り教えただろ?
それで降りれば大丈夫だ」
「ううう…さっきから何度も転んでお尻がぺったんこになりそう…
寒いし、わたしスノボ向いてないんだ…」
ブツブツと文句を言うミコトも、ここまで来たら滑るしかないと腹を括ったようだ。
ミコトがゆっくり木の葉滑りで降りていくのに対し、俺はボードの向きを縦にして、スイスイと斜面を滑り降りて行く。
当然、ミコトをほったらかして俺が先に下まで降りきることになるのだが、ミコトは途中何度もドテッと転んではまた立ち上がり、また転ぶ。を繰り返している。
ようやく下まで降りてきたミコトだが、ゴーグルをしていてもわかる。
不機嫌度MAXだ。
「ミコト?すげえじゃねぇか。
下まで降りて来れたな」
「…陣平くんに放っていかれた」
「わ、悪かったって…」
「わたしが何度も転びながら降りてる中、スィーって。
ひどい…」
ゴーグルを外し、じわ…とべそをかきながら口を尖らせるミコトが可愛すぎて、俺は思わずミコトをぎゅっと抱きしめた。
「悪かったって。泣くなよ」
「…陣平くんのばか…おいていかないでよ…」
「よしよし。
…腹減ったんだろ?カレー食いに行こうぜ」
「…食う」
「口悪りぃな」
そう言って笑うと、ミコトに手を差し出した俺。
ミコトは少し癪な顔をしながら、その手をおとなしく握った。