第22章 ゲレンデに溶ける恋 ☆
松田side
真っ白なゲレンデは、太陽の光が反射して目が眩んだ。
そしてミコトはスノボをするのは初めてと言っていたが、予想以上だった。
「じ…じじ陣平くん!!離しちゃやだ!!」
「お前まだここは平面だぜ?
立つだけで何時間使うつもりだよ」
俺たちが今いるのは、リフトに乗った頂上でも、坂道でもなく、滑りきったところの平面。
リフトに乗る前に、まずは板の上で立てるようにならないと話にならねえ。
が、ミコトは板の上に乗ったままへっぴり腰になり、俺の手を離そうとしない。
「こ、こわいよ!!転んじゃう!」
「転ぶ時はケツから転べよ〜」
「そんな高度なこと言わないでよ!!」
強気な口調でそう言いながらも、脚はガクガクと震え、俺が手を離すとすぐにバランスを崩して俺の手にしがみつくミコト。
「お前、萩原の妹のくせに運動音痴かよ」
「そうだよ!!
運動神経は全部お兄ちゃんとお姉ちゃんに取られたの!!
そのかわり、神様はわたしに頭の良さをくれたんだから!」
「遠回しに、自分は秀才だって言いてぇんだな…」
減らず口を叩くミコトに呆れながらも、苦戦すること1時間。
ようやく板の上に立てるようになったミコトは、まだロクに滑ってもいないのに半べそをかいてむくれている。
「…お腹すいた」
「まだ滑ってもねぇくせに何言ってんだよ。
ほら、リフト乗って上行くぞ」
「ええー!本当に行くの!?」
「スノボしに来たんだろ?」
「ハイ…」
と、既にやる気を無くしたミコトを焚き付け、俺たちはリフト乗り場へと向かう。