第22章 ゲレンデに溶ける恋 ☆
「おい」
そう声をかけ、わたしの腕を握る男の手を振り払い、わたしの背中の後ろに隠したのは、大好きな陣平くん。
「俺の彼女に触んなよ」
「んだよ。男いるならそう言えよ」
「行こうぜ」
どうやらただ一緒に遊ぶ女の子を捕まえたかっただけらしい。
その男たちは陣平くんを見ると、あっさりとわたしから興味を外し、撤退して行った。
「陣平くんー!かっこいい!!」
呑気にそう言いながら陣平くんに抱きつくわたしを、呆れた顔をして睨んだ。
「こンのバカ!!!」
陣平くんの怒号がわたしの耳をキーーンと鳴らし、わたしは思わず耳を塞いだ。
「かっこいいって褒めたのに!」
「ああ言うのは最初から返事せずに無視しろ!
…無防備なんだよ…お前は」
「…でも、陣平くんが助けてくれるでしょ?」
さも当然。と笑うわたしを見て陣平くんが深いため息を吐いた。
「はあ…いや、そうだけどよぉ…
少しは危機感ってヤツを覚えてくれ…」
「わかったよ…そんなに怒らないで?
助けてくれてありがとう。
怒るのやめて一緒にスノボ楽しもう?」
ね?と陣平くんの顔を覗き込むと、陣平くんはわたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「その顔、卑怯だって」
「その顔ってどれ?!」
「あー。もう、いい。
行くぞ、ボード教えてやるから」
わたしの疑問の答えは与えてくれず、陣平くんはわたしの手を引いた。
そしてわたしたちは、ホテルの出入り口からゲレンデへと足を運んで行った。