第21章 酔っ払った萩原妹 ☆
アパート前でタクシーを降り、ようやく自宅に戻ってきた俺は、今更ながら思った。
「エレベーターのある家にすれば良かったぜ…」
ボロボロの身体でミコトを抱き上げてこの階段を上がるのかよ…
と、目の前にあるたった2階までのアパートの階段を見て、はぁあっとため息をついた。
「おいミコト、お前自分で歩けるか?」
「陣平くんが抱っこしてよお」
「…だめだこりゃ」
ミコトを抱き上げたまま、俺はゆっくりと階段を登りだす。
くっそ…
せめて仮眠だけでもとってりゃあ余裕なのに…
と、ふらつく足で一段、また一段と階段を登る俺。
「んんー、陣平くんー」
「おい、危ねぇから動くなって」
「しゅきっ!」
「っうぉ!!」
未だ酔っ払っているミコトは、可愛い声でそう言いながら身体をくねらせ、俺の頬にキスをする。
思わず足を踏み外しそうになった俺は、慌てて階段の手すりを掴んだ。
こいつ…
俺が今どんだけ過酷なことやってるかわかってるのか?!
…分かってるわけねぇな…
自分で言った言葉に自分でツッコミをいれながら、俺はようやく自宅の玄関ドアを開けて帰宅することに成功した。
「つ、つかれた…!!!」
ミコトをベッドに下ろして、俺はその場に座り込みはぁああっと安堵のため息を漏らす。
ミコトはそんな俺の頭をなでなでと撫でながら笑う。
「じんぺーくん、偉いねえ!よしよし」
「…お前なあ…」
さすがの俺もブチギレそうになったが、まあでもこれでやっと寝られる。
そう思い直し、ミコトを無理矢理ベッドに寝かせた。