第21章 酔っ払った萩原妹 ☆
自宅を出て1時間。
「ここか…?」
ミコトの大学の最寄り駅近くの肉バル
その情報だけで目的の店に辿り着けたのは奇跡に近い。
洒落ている外観の店の前に立つと、思わず安堵のため息が漏れた。
周りに肉バルらしき店はねぇし、きっとここだな。
カランとドアベルを鳴らしながら店に入ると、忘年会という名にかこつけて羽目を外しまくっている連中がゴロゴロいる。
つい自分の大学生時代を思い出した。
萩原とああやって良く飲んだことも。
あの頃は、楽しかったな。
どんな飲み会でも萩が話題の中心だった。
萩原のまわりには、自然と人が集まる。
萩のあの面倒見が良くて優しい性格は、女はもちろん、男友達にも好かれていた。
感情の起伏が激しく、すぐに表に出ちまう俺のフォローもよくしてくれたっけ…
つい萩原のことを思い出し、感傷に浸っていると、奥の席から誰かが手を振ったのが見えた。
「あ!陣平さん!
こっちです!」
俺の名前をさん付けで呼ぶ声が聞こえ、そちらを向くと大学生の集まりの中に机に突っ伏して眠るミコトを見つけた。
隣にはプリンス新出もいやがる。
「陣平さんとの電話を切った後、熟睡で…」
「ったく…
オラ!ミコト!帰るぞ」
「んんー…」
乱暴にそう言いながら肩をゆするが起きようとしないミコト。
すぴーすぴーと鼻にかかった寝息を立てながら眠ってやがる。
「ミコト!おい、ミコトー!
…しょうがねぇな」
呼んでも起きないミコトに痺れを切らした俺は、ミコトを抱き上げて連れて帰ろうとした。
そのとき
「ん…じんぺいくん?」
ミコトの声が小さく聞こえ、顔を見るととろんとした目を開けて俺を見てる。
頬を桃色に染めて、虚ろな目はどこか色っぽい。