第21章 酔っ払った萩原妹 ☆
そう思いながら、俺は至って冷静に酔っ払いの相手をする。
「今から迎えに行くから待ってろよ」
「えぇー?好きって言ってよお!
言ってくれなきゃ迎えにきても帰んない」
「はぁ?!」
「ミコトのこと、どのぐらい好きか言って!」
そんなワガママを大きい声で言われた俺。
働き過ぎで脳が疲れ過ぎていてツッコむ気力すらない。
まあ、好きだと言ってもこの電話を聞いているのはミコトだけだ。
これまで何度も伝えたことあるし今更何を恥ずかしがることがある。
そう自分に言い聞かせ、俺はコホンと咳払いをして受話器に語りかけた。
「ミコトのこと、世界で一番好きだよ。
…ほら、これで満足か?」
ったく…こんな恥ずかしいことまで言わせやがって。
連れて帰った後覚えてろよ…
と思った瞬間気づく。
受話器からはミコトの声は聞こえず、代わりにスー…スー…と小さな寝息が聞こえて来たことを。
「おい…俺にあんな恥ずかしいこと言わせといて寝たのか?!
おい!ミコト!!!」
と、声を荒げると、申し訳なさそうなミコトの友人の声が代わりに聞こえた。
「す、すいません。ミコト、また寝ちゃったみたいです…」
「…すぐに迎えに行くんで」
それだけ言って電話を切ると、俺はベッドからゾンビのように身体を起こし、財布と携帯と家の鍵だけポケットに入れ、ボロボロの身体に鞭打ちながら駅へ向かった。
俺の家は大通りに面していないから、駅まで走ってそこから電車に乗るほうが早い。
そう考え、俺は小走りに駅に向かった。
不思議だな。
さっきまであんなにもう限界だと思っていたのに、ミコトのためならまだこんなに走れる。
バカだな。俺。
本当、勘弁してくれよ俺の彼女…
そんなことを思いながら。