第21章 酔っ払った萩原妹 ☆
仕方ないと覚悟を決め、眉間に皺を寄せながら携帯をカパッと開くと、そこには
萩原ミコトの名前が。
なんだミコトか…
悪いが無視させてもらうぜ……
そう思うくせに、俺の親指は一向に通話終了ボタンを押そうとしない。
……無視なんか、できるわけねぇ…
この世で一番大事なミコトからの電話。
どんなに身体が疲れていようと、それを無視するなんて俺には到底出来ず、顔を布団に埋めたまま通話ボタンを押した。
「ミコトか?どうした?
俺、今から寝るんだけど」
「あ、もしもし。陣平さんですか?」
陣平さん?
…へ?ミコトの声じゃねぇ。
たしかに萩原ミコトからの着信だったのだが、かけてきたのは別の人間。
まさかあいつ携帯落としたのか?
そんな予想を巡らせていると、受話器の向こうからまたミコトとは違う女の声が聞こえる。
「あの、陣平さんですよね?
ミコトの彼氏の」
「…そうだけど。
あんたは?」
「ミコトの友人のアユです」
「…あぁ!プールの。
え、ミコトに何かあったのか?」
即座に状況がおかしいことを察知し、まさか倒れて病院に運ばれたとか、行方不明になったとか最悪な事態を想定してしまう。