第20章 兄が愛した人 ☆
松田side
ミコトの唇は世界で一番甘い味がする。
そして、触れれば触れるほどもっと欲しくなる、麻薬みたいな唇だ。
ミコトにキスをしながら思った。
萩原が死んでから1年ということは、俺とミコトが付き合い始めて1年が経つと言うことだ。
この一年、俺はお前を上手く愛せただろうか。
寂しい思いもさせた。
泣かせたこともあった。
思い返せば、俺の方がミコトの笑顔に救われていたんだ。
萩原がいなくなって、復讐ばかりが頭を占領する俺にとって、唯一の清涼剤。
それがミコトだった。
ミコトが笑うと嬉しくて、可愛くて愛しくて、1年経ってもそれは少しも変わってねぇ。
むしろ近づけば近づくほど、きっと付き合い始めた時よりもっとミコトのことが好きだ。
「…陣平くん?」
「え?」
キスをして、唇を離したままミコトの顔をぼーっと見ながら頬を撫でる俺に、ミコトが名前を呼んだ。
「何考えてるの?」
「…お前のことしか考えてねぇよ」
そう言うと、俺はミコトの服の下に手を滑らせていく。
もう何度も触れたこの素肌に触れる時、未だにドキドキ心臓が煩いのは、一体いつになったら治るんだろう。