第20章 兄が愛した人 ☆
きっと陣平くんの中でも再度固く決心した瞬間だったんだろう。
「だから、お前は何も心配すんな。」
「っ…ふふ。陣平くん、お兄ちゃんみたい」
「バァーカ。俺はお前の彼氏だって。」
頭を撫でながら、陣平くんは呆れたように笑った。
「…あの人、あのお兄ちゃんの彼女…
あの人には、いたのかな?
お兄ちゃんがいなくなってから、こうして抱きしめて支えてくれる人」
「…」
「わたしには陣平くんがいたけど、あの人はそれがお兄ちゃんだったはずなのに…
そう思うと…」
そこまで言ってまた涙で喉の奥が詰まった。
「お前なあ、他人の不幸まで背負ってたら身体もたねぇぞ?
それに、あいつは大丈夫だよ。
…萩が惚れた女なんだから」
そう言うと、陣平くんもお兄ちゃんを懐かしむように笑った。
「そっか…そうかも…」
陣平くんの言葉に妙に納得してしまったわたしは、ぎゅーっと陣平くんの身体に抱きついて、甘えんぼをする。
「じんぺーくん。キスして?」
「…して?って言われてからするの、恥ずかしいって」
そう言いながらも、陣平くんはわたしの顔を上げると、ゆっくり唇を重ねた。
ちゅ…とぎこちなく唇に触れるのが、彼らしくてきゅんと胸が高鳴った。
「っん…もっと。ほっぺにもして」
「ワガママなお姫様め」
ちゅっ… チュ…
陣平くんの唇が、わたしの唇、頬、おでこ、耳、そしてまた頬にキスを落とした。
くすぐったくて思わず身を捩ると、陣平くんはわたしの首筋に噛み付いた。
「んあっ…」
「っ…やべ…その声興奮すっからやめろ…」
「じんぺ…くんが、そんなところ噛むから…」
そう言うと、陣平くんはわたしの背中に手を回し、わたしが着ていたワンピースのホックを下ろした。
「エッチ…」
「エッチで悪いか?」
そう開き直った陣平くんは、わたしを抱き上げてベッドに下ろすと、ゆっくりと唇を重ねた。
何度も、角度を変えて触れるだけのキスが、だんだんと舌を使った濃厚なキスに変わっていく。
そしてそのまま、陣平くんの一番近くへとしがみついた。