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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第20章 兄が愛した人 ☆




松田side


萩原の彼女に会ってから、ミコトはずっと悲しい顔をしている。
本来なら、兄の彼女と仲良く談笑する未来があったのかも知れねぇが、萩がいなくなったことでそれは露と消えた。


萩原家の墓がある寺の前でタクシーを拾い、俺の家に帰ろうとした時、ミコトが突然運転手に違う行き先を告げた。


「すみません。千福寺までお願いします。」

「かしこまりましたー。」

「は?!」


突然ミコトがある寺を行き先に指定したのを、俺は驚くばかりだった。
その寺は、何の偶然か俺の家系の墓がある寺だったから。


「何で急に…それに、お前どうして」


一体何の目的でミコトがその寺を行き先に指定したのか、それに俺の家系の墓がある寺なんて、ただの偶然か?


よく分からないこの状況に、俺はただ頭にはてなマークを浮かぶことしかできない。

萩原家の墓からタクシーで20分。
ミコトの真意がわからないまま、目的の千福寺に到着した。

到着するや否や、飛び出すようにタクシーを出たミコトは、千福寺の中に入るのかと思いきや、なぜか隣の空き地の前に立ち尽くした。


「おい。何やってんだよ。
何なんだよここは!」

「…無い…」


ミコトは何もないだだっ広い空き地を見ながら、ぽつりとこぼした。


「無いって何が?」

「わたしがタイムス……っ…なんでもない」


勢いのまま何かを言おうとしたミコトは、ハッと思い出したかのように固まった後、何でもないと言いながら俯いた。


「…なら、もう帰るぞ。」

「帰るってどこに?!」

「…俺んちだろ?
腹減った。なんか美味いもん作ってくれよ」

「うん…」


ミコトはまるで小さい子供みたいに俯いて、俺の手をぎゅっと握った。

俺はその手を引いて、またタクシーを捕まえるために大通りに出た。

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