第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆
10分、20分、30分
時計の秒針がもう何時間刻んだのかわからないとき
ガチャガチャッ
玄関のドアが開く音がした。
パッと顔を上げて、振り返ると
「うおっ。
オメー、電気も付けねぇで何してんだよ」
いつもの調子でそう言いながら目を丸くしてわたしを見る陣平くんがそこに立っていた。
「じんぺ…」
「悪いな。仕事が長引いたんだ。
携帯の充電切れてて連絡できなかった」
「っ…う…うぅうーー…」
もう言葉にならなくて、座り込んだまま立ち上がって陣平くんに抱きつくことすらできなくて、わたしはその場でまるで子供のように泣いた。
「お、おいおい。何泣いてんだよ」
「っうっ…うぇぇえ…」
涙も拭かずに泣き続けるわたしを見て、様子がおかしいことに気付いた陣平くんは、急いで靴を脱ぐと、わたしの方へ走ってきた。
そして、泣いてるわたしの身体をいつもみたいに優しく抱きしめながら髪を撫でる。
「どうした?どっか、痛いとこあるのか?」
「じ…んぺ…生きてる…
生きてる…」
陣平くんの背中に手を回し、彼の身体をぎゅっと力一杯抱きしめ返しながら、深呼吸をした。
陣平くんの匂いがする。
陣平くんの声がする。
陣平くんの体温を感じる。
陣平くんが、生きてる…
「陣平く…」
「ん?」
「お誕生日っ…おめでと…ッぅええぇ」
「あーもう。泣くなよ。
…泣くな…」
泣きじゃくるわたしの唇を、陣平くんがキスで塞いだ。