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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆




タクシーを飛ばしてまた40分。
時刻はもう21時半になっていた。

アパートの前に立ち、陣平くんの部屋を見上げるけれど電気はついていない。


「…きっと、疲れて眠ってるんだよ」


彼がまだ帰ってきていないと思いたくないわたしは、そう言いながら一段一段と階段を登る。

陣平くんがくれた合鍵を取り出し、鍵穴に刺そうとした瞬間、また手が震えた。


大丈夫、きっと陣平くんはもう帰ってきてる。
ベッドで、疲れ切ってすやすやと眠っているはず。


ごく…と生唾を飲み込み、震える手で鍵をさして回した。

重い扉をガチャ…と開けて中に入りながら陣平くんの名前を呼ぶ。


「陣平くんー?」


返ってくるのは静寂。

恐る恐る、電気もつけずに部屋の中に足を踏み入れて絶望した。

そこには誰もいなかったから。


「…どうして帰ってきてないの…」


膝から崩れ落ちたわたしの目から、涙がこぼれてカーペットにシミを作る。

変なの。陣平くんはきっと大丈夫なはずなのに、涙が溢れて止まらない。


「怖い…」


あの日、お姉ちゃんから電話がかかってきたあの瞬間を思い出す。
人生で一番絶望したあの瞬間
わたしも死んでしまいたいと思ったあのとき

怖いよ陣平くん…

怖い…


だけどもう陣平くんの携帯に電話をかける勇気はなかった。
あの電子音声を聞くと、現実味が増してくる。


「陣平くん…っ…
やだ…」


ボロボロと涙を零しながら、わたしは座り込んだままベッドの端に顔を埋めた。

陣平くんの匂いがするこのベッドに突っ伏して、とめどなく溢れる涙を拭う元気もないまま、ひたすらに泣いた。


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