第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆
東都国際ビルディングに到着した。
精算の時間すら惜しいわたしは運転手さんに
「お釣りは結構です」
と言いながら一万円札を無理矢理渡し、タクシーを飛び出した。
ビルの前には大勢の人だかりができていて、わたしは思わず前にいる人の腕を掴みながら必死の形相で尋ねた。
「あのっ!
爆弾は、爆発しましたか!?」
「うわっ!びっくりした!
1つ目の爆弾は爆発したけど、2つ目は警察の人が30分前に解体したらしいよ。」
「っ!それで、中にいた人は無事ですか?!
解体した警察官は…」
「さあ…さっき救急隊員の人が、死者が1人出たって言っているのが聞こえたけど…」
うそ…
ドクンと心臓が跳ね、それ以上その人が言ってる言葉が耳に入ってこない。
陣平くん…陣平くん…陣平くん…!
わたしはまた陣平くんの携帯に着信を飛ばすけれど、返ってくるのはやっぱりあの電子音声。
爆発物処理班は現場からすでに撤収している様子だ。
「…仕事中だから、出られないだけだよね…?」
案外、家に帰ったらもう陣平くんも帰ってきてるのかもしれない。
おせーよ、どこ行ってたんだ、腹減ったぜ
そう言いながら、きっとわたしの髪をくしゃくしゃに撫でるはずだ。
死者1名が、陣平くんのはずないじゃん。
バカだな、わたし…
必死に自分の脳を騙そうと、何度もブツブツそう言いながら、これ以上ここにいても仕方がないと判断したわたしは、またタクシーを捕まえて陣平くんの家へと向かった。