第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆
まさか、あの観覧車じゃなくてこのビルで…?
3年後の11月7日じゃなくて今日…?
そんな嫌な予感ばかりが頭によぎり、いても経ってもいられずにわたしは陣平くんの家を飛び出した。
東都国際ビルディングまでタクシーを飛ばして40分はかかる。
その間に爆弾が爆発したらどうしよう…
どうしよう…陣平くんが死んでしまったら…
またあんな思いするの?
あの、苦しくてつらくて悲しい思いを。
タクシーを捕まえ後部座席に乗るやいなや、ガクガクと震える手をぎゅっと握りながら息が上がってくる。
「東都国際ビルディングまで」
「お客さん、あそこは今大変なことになってるよ。
行かないほうがいいよ」
「お願い…!早く向かって!」
そんな尋常じゃない様子のわたしを見て、タクシーの運転手さんは車を発進させながらも心配そうにわたしをバックミラー越しに見た。
「お客さん…大丈夫ですか?
顔色がものすごく悪いですよ」
「大丈夫です」
嘘だ。全然大丈夫じゃない。
陣平くんへさっきからずっと着信を飛ばしているが、返ってくるのは「電源が入っていないためかかりません」の電子音声。何度も、何度もその音声を聴いて、その度にわたしの身体が震えてくる。
陣平くん…無事でいて…
お願い…
祈るように、縋るように、わたしはずっとタクシーのフロントガラスから見える景色を睨んでた。