第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆
19時
ケーキはスポンジが焼き上がり、陣平くんが帰宅する直前に飾り付けをする予定。
カレーはもう出来上がって、ハンバーグもタネは完成。
陣平くんはいつも帰る前にメールを一本くれるから、それを受信したらハンバーグを焼いて、ケーキを飾りつけよう。
「ふふっ…早く帰ってこないかな」
ちょうど19時だからもうすぐかな?
まだメールが来ていないからおそらく仕事が長引いているんだろう。
わたしはテーブルの上にグラスやワイン、カトラリーを準備したあと、買っておいたプレゼントを置いた。
30分経っても陣平くんから何の連絡もない。
陣平くんの所属する爆発物処理班は、異常事態が無ければ普通の警察官。
イベントの警備に突然駆り出されたりすることはしょっちゅうだ。
カレーは温め直せばいいや。
そう思いながら蓋をした時、わたしの携帯が鳴った。
「陣平くん?!」
誰からの着信か見ずに、陣平くんだと思って通話ボタンを押すと、受話器から聞こえてきたのはアユの声だ。
「ミコト!大丈夫なの!?」
「へ?何が?」
「何って…テレビ見てないの?!」
尋常じゃないアユの様子に、わたしは少しビクつきながらテレビのリモコンを握り、スイッチを入れた。
そしてテレビ画面に映った中継に目を見開く。
「只今、東都国際ビルディングで大規模な爆発があり、多数の怪我人が出ている模様です。
爆弾はまだ爆発する可能性があるとして、現場には不穏な空気が流れています。
先程、警察の爆発物処理班が解体に向かったとの情報も入っています。
詳しい情報が入り次第またお伝えいたします」
現場リポーターの切羽詰まるような声が耳に入ってくる。
そしてその単語、ひとつひとつを理解するのに長い時間を要した。
「陣平くん…」
まさか、解体に向かった爆発物処理班って陣平くん…!?
「ごめん、アユ…一旦切るね…」
「えっ!?ミコト!?」
ぷつ…
通話終了ボタンを押したあと、手がガクガクと震えてきた。