第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆
松田side
時計を見るともう18時。
今日は特に大きな事件もなさそうだし、予定通り19時には家に着けそうだな。
そう思いながら今日の日誌をつけていると、突然執務室にコール音が鳴り響いた。
「至急!至急!
たった今、東都国際ビルディングに爆弾を仕掛けたとの予告通報あり!
爆発物処理班の出動を要請する」
「マジかよ…」
今日に限って。しかも帰ろうと思ったこのタイミングでデカいヤマが来やがった。
「松田!出動だ。行けるか?」
「もちろんッス」
すっかり帰り支度をしていた俺は、すぐさま出動の準備を始めた。
耐爆スーツに着替え、解体に必要な工具、ヘルメットを着用する。
そして、最後に死ぬかもしれないと心の準備を。
ミコトには申し訳ねぇが、今日はすんなり帰れそうにねぇな。
そう思った自分に、思わず驚いた。
今まで、出動前に考えることは
「あー。昨日カレー食っておけばよかった」
「あの漫画、明日最新刊発売なのによぉ」
などで、特定の誰かを思い出すことなんてなかった。
けれど今は、確実にミコトを思い出す。
今から死ぬかもしれないと思った時、真っ先にミコトの顔が浮かんだ。
「フ…お前を置いて、死ぬわけにはいかねぇな」
そう思い直すと、俺は自分のロッカーをバタンと閉め、現場へと走り出した。
現場に到着すると、すでに1つの爆弾が爆発した後らしく、多数の負傷者が救命医師の手当てを受けている。
「松田。どうやら予告通報によると爆弾は全部で二つ。
一つはさっき爆発した小規模なもの。
本命がまだ残ってる。」
「了解。場所は?」
「第一隊の報告で、最上階にある映画館に爆発物を目視したらしい。」
「最上階か…
エレベーターで向かう間に爆発しないことを祈るしかねぇっすね。
向かいます。」
そう頷くと、俺は他の隊員を引き連れてエレベーターで最上階へと登った。