第19章 ハッピーバースデー陣平くん ☆
電話を切った後、俺はタバコを吸おうとベランダに出た。
ミコトが家に来るようになってたから、部屋の中でタバコを吸うのをやめた。
何となく、ミコトにタバコの匂いがつくのが嫌だったんだ。
ミコトからはいつも良い匂いがするから。
ライターで火をつけ、ふぅーっと煙を吐くと、萩原のことを思い出した。
あいつも、この銘柄のタバコが好きでよく吸っていたな。
明日、ついに俺は萩原よりも年上になるのか。
あいつの時間はあの時で止まったままなのに、俺の時間は容赦なく流れている。
年を重ねるごとに萩原との年齢差が開いていくんだな。
生きていれば、きっと萩原も俺の誕生日を祝ったんだろう。
あの、いつもの飄々とした余裕な顔して、俺の一番欲しいものをプレゼントしてくる。
萩原はそういうやつだった。
萩原が最後にくれたのは、ミコトの手を取る勇気。
萩原からの最後にして最大のプレゼントだったと今になって思う。
萩原…
明日の俺の誕生日、お前の代わりにミコトが祝ってくれるってよ。
どんな1日になるんだろうな。
煙を吐きながらそんなことを思い、萩原に思いを馳せるが、俺には萩原の声も何も聞こえなかった。
何も。