第3章 死ぬということ
2年ぶりに陣平くんを見た気がする。
タバコ、吸うようになったんだ。
それ以外はあまり変わってないな。
あの頃の陣平くんのまま。
「ひ!さしぶり」
思わず声が裏返ったわたしを見て、陣平くんが吹き出した。
「っふ…何緊張してんだよ!」
そう言いながら、わたしの頭をくしゃくしゃに撫でた。
あの頃とまるで同じ撫で方で。
ぎゅっと心臓が鳴った。
あっさりと、わたしの心はまた振り出しに戻ってしまう。
たった数分一緒にいて、たった一度髪を撫でられただけで。
重いものは陣平くんとお兄ちゃんが持ってくれて、わたしはそれ以外の小物が入った紙袋を持つと部屋に向かった。
部屋の中に入ると、家具家電はほとんど搬入済みで、もう住めるほどに出来上がってる。
お兄ちゃんが女を連れ込むと堂々と言ってた部屋に脚を踏み入れ、妹としてはなんとも言えず複雑な気分だ。
段ボールを開けながら、陣平くんとお兄ちゃんが同期の話をしてるのを横でずっと聞いてた。
懐かしいな…この感じ。
まるで身体だけそのままで昔にタイムスリップしたみたい。
わたしがあの時、好きなんて言わなければこの2年も変わらずこんな風にいられたのかな。
今、またこうして一緒にいるのは、時間が解決したということ?
わたしはまだ、相変わらず陣平くんが好きなのだから、成長してないのはわたしだけだ。
そうやって自分に呆れながら荷物を片付けていると、突然お兄ちゃんが大きな声を上げる。
「あー!しまった」
「んだよ!びっくりした」
そう言いながら睨む陣平くんに、あははと頭を掻きながらお兄ちゃんが笑った。