第18章 わたしの知らない陣平くん ☆
わたしがどうして泣いてるのなんか、陣平くんにはきっとわからない。
だけど怒りもせずに優しくわたしの涙に触れながら頭を撫でてくれる。
「ミコト?」
「…わかってるよ。
陣平くん、わたしが初めての彼女じゃないって。
分かってるけど…いやなんだもん。」
「え…」
「キスだって、エッチだって、手を繋ぐことすらわたしは全部陣平くんが初めてだったのに…
陣平くんの彼女になれるだけで幸せなのにこんなこと思っちゃうの。
もうやだ。自分がやだ。」
そこまで言うとまたじわっと涙が溢れた。
こんなくだらないヤキモチ、妬いてる場合じゃない。
一分一秒でも、陣平くんと仲良くしていたいのに。
色んな感情でぐちゃぐちゃのわたしを、陣平くんはわしゃわしゃと髪を撫でながら言う。
「バカだな…」
「…ばかですよ。どうせ」
「いや、バカなのは俺のほう。
…なんでもっと早く、気付かなかったんだろうな。
お前のこと、大切なのは妹としてじゃなくて、女としてだって。」
そう言いながら、陣平くんはわたしの身体を抱き締めた。
ぎゅっと、宝物を抱くように優しく。
「お前は誰より大切な存在だった。
彼女なんかより、もっと大事な…
そんなお前に、手ェ出す勇気がなかったんだよ。俺に。
汚せねえって思ってたし」
「…もうめちゃくちゃに汚したくせに」
ちょっとだけいじめてやろうとそう言うと、陣平くんはバツが悪そうな顔をしてわたしを見た。
「もうこれ以上汚されたくねぇか?」
「…ううん。
もっと、陣平くんに汚されたい。
陣平くん色に染めて?」
「お前、そう言うこと、俺以外に絶対言うなよ?!」
そう釘を刺した陣平くんは、わたしの唇にキスをした。
「俺だけだ。
お前に触れていいのも、お前を汚せるのも」