第18章 わたしの知らない陣平くん ☆
脱衣所には陣平くんのスウェットがわたしの着替えとして置いてある。
例によってズボンを履かずに上だけ着て部屋に戻ると陣平くんがベッドに腰掛けながらちょいちょいと手招きをした。
「髪、乾かしてやるからこいよ」
そのお誘いにわたしはまるで陣平くんの飼い犬みたいに彼のそばに駆け寄り、ストンと腰を下ろした。
「えへへ。乾かしてー!」
「犬かよ」
お手本のようなツッコミをしながら、ドライヤーのスイッチをオンにし、陣平くんの指がわたしの髪を梳かした。
陣平くんの指がわたしの髪を通るたび、髪一本一本に神経が通っているみたいにドキドキする。
わたしの髪をわしゃわしゃとぶっきらぼうに触れながら乾かすところ、陣平くんらしいな。
「陣平くん、乾かすの下手くそだね」
何気なく言ったわたしのその一言。
まさかこの後、言わなければよかったと後悔することになるとは思っても見なかった。
下手くそと言ったわたしに、陣平くんは笑いながら、言った。
「うるせぇー。
誰かの髪乾かすのなんて、何年ぶりだよ」
何年ぶり…?
ということは、これまでこうやって誰かの髪を乾かしたことあるの…?
そりゃあ、陣平くんは今まで彼女いたことあっただろうし、わたしが初めての彼女じゃないこともわかってた。
だけど、他の誰かにこんな風に髪に触れたりしてたんだ。
わたしのこと、気になってたとか言ったくせに、他の誰かと。