第18章 わたしの知らない陣平くん ☆
映画を見終わった後はスーパーに寄り、例の如く陣平くんの家で夕食を振る舞った。
夕食を済ませ、お風呂が湧くまで2人でTVを見ていたとき、歌番組に、出てきたアイドルグループ のセンターを見てわたしは思わず声を上げる。
「あ!Lilaだ!
このときはアイドルだったんだよねー!懐かしい」
「…お前、何言ってんだ?」
ハッと陣平くんを見ると、わたしの方をまるでおかしい人間を見るような目をして見てる。
そりゃそうだ。
今をときめくアイドルを見て、懐かしいなんて言ってるんだから。
「あ!陣平くん!
お風呂湧いたみたいだよ!先入って?」
「お前は?」
「わたしはもう少しこの番組見たいから!」
「あ、そ。じゃあ先に入るわ」
そう言って陣平くんはお風呂場へとリビングを後にした。
危なかった…!
危うく、わたしが未来から過去へタイムスリップしてきたとバレるところだった。
…でも、もし本当のことを話したら陣平くんはどんな反応をするのかな。
信じてくれない気もする。
もしも、4年後の11月7日のことを陣平くんに話したら、
それだけで彼の死を阻止できるのだろうか。
陣平くんがお風呂から出て、入れ替わりでわたしがお風呂に入っているときもずっとそのことを考えてた。
ぱしゃ…とさっきまで陣平くんが入っていたお湯を救いながら思った。
陣平くんを救うためにはどうすればいいか。
きっと陣平くんに話しても信じてもらえないだろうし。
お兄ちゃんのときみたいに付け焼き刃で過去を変えようとしてもきっと無理。
考えても答えがすぐに浮かぶわけもなく、結局いいアイディアひとつすら思い付かないままお風呂を出た。