第17章 太陽と水着とたこやき
こいつさっき、東都大学附属病院の外科だと言おうとしてなかったか?
しかも、いくら医学部の学生って言っても、突然人が倒れて心肺蘇生をあんなに冷静かつ手際よく出来るもんなのか?
実際、年に何度も訓練を受けている俺ですら、初動は一瞬の戸惑いが生まれる。
今日のミコトの処置は、手順を知っていると言うレベルじゃねぇ。
やり慣れてる。
今まで何度もこうして患者を診てきたような、そんな立ち振る舞いだったように見えた。
なんて考えては見たものの、じゃあ医学部の学生じゃなくて本物の医者だなんてあるはずがないし、俺の考えすぎか…?
きっと、俺はどこかで思っていたんだろう。
ミコトは、いつまでもあの頃のままだと。
もうミコトが俺の後ろを追っかけて走り回ってたガキじゃねぇことは、こいつを彼女にした時から、いやそれよりもっと前から痛いほどわかっていたはずなのに。
今日、実際に人の命を救うミコトを見て、こいつはもう一人前の大人の女だなと一層実感した。
そんなことを考えていると、救急隊員が患者を乗せた救急車がその場を去っていった。