第17章 太陽と水着とたこやき
その後AEDが運ばれてきて、それを開いたミコトは一瞬の迷いもなく処置を続ける。
パットを身体に貼り付けた後、ボタンに手をかけ、
「押します。離れて!」
そう指示して患者からみんな離れたのを確認すると、AEDのボタンを押した。
ガタンッとその患者の身体が大きく跳ねる様は、医療ドラマでよく見るアレだ。
俺は職業柄、何度もこの瞬間を目撃しているが、周りのギャラリーには珍しいようで、携帯でミコトの心肺蘇生の様子を撮影している奴もいる。
そのとき、その男性は飲んでいた水をかはっと吐き出した。
「!田中さんー!わかりますか?」
「…ぅ…」
「良かった!もうすぐ救急車来ますからね。
もう少し頑張りましょう!」
蘇生が成功し、安堵した様子のミコトの隣から、この男性の娘と思われる女の子が抱きつきながら呼んだ。
「パパ!!」
その様子を見て、ミコトが優しく笑いながら言う。
「もう大丈夫だよ!パパの手、握ってあげて?」
そう言いながら、女の子の手で男性の手を握るように、手を包んでやるミコト。
ミコトの言葉通り、その数分後に救急車が到着した。