第17章 太陽と水着とたこやき
ミコトは近くにあったバスタオルを手際よく男の頭の下に引くと、溺れていた男の胸に耳を当てた。
「まずい。心停止してる」
「嘘だろ…」
「陣平くん、救急車呼んで!
あと、そこの人、AED借りてきてくれますか?
あ、ライフガードのお兄さん!
わたしが心マするので、人工呼吸をお願いします。」
そう的確に指示をしたミコトは、即座に心臓マッサージを開始した。
俺が携帯で救急車を呼ぶ間、ミコトの処置は続く。
「この方、名前わかる人います?」
「お、夫です…!田中といいます」
そう言う女性の隣には小さい女の子が泣きながらその様子を見ている。
どうやら、家族で来ていて、父親が突然こんな状態になったようだ。
「田中さーん。聞こえますか?
田中さんー!」
仕切りにその男の名前を呼びながら、心臓マッサージを続けるミコト。
医学部の学生だからと言われればそうなんだが、まるで本物の医者みたいに見えた。
ミコトが15回心臓マッサージをした後、ライフガードが人工呼吸をする。
警察学校でも習った心肺蘇生法を完璧にこなすミコトはさすが医学部といったところか。
俺は救急車を呼んだ後、ミコトが人を救う瞬間を、ただじっと見ていた。
「田中さんー!娘さんが戻ってきてって言ってますよー!
頑張れー!」
心臓マッサージをしながら何度も何度も気を失った男性に話しかけるミコト。